大好きなベース奏者ジョージ・タッカーの参加した全てのアルバムをレヴューしたいと
思っている。ランダムにアルバムを選んで最後に録音順に整理しなおすつもりだ。
(2.20.2007)
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■ vol GT-13 VOL.3 (7.17.2008)
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リーダー名 : Curtis Fuller
メンバー : Curtis Fuller tb, Art Farmer tp, Sonny Clark p,
George Tucker b, Louis Hayes ds
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タイトル: VOL.3 |
録音年月日: 1957 12 01 |
レーベル/規格番号: BLUE NOTE |
収録曲: 1.Little Messenger 2.Quantrale 3.Jeanie 4.Carvon
5.Two Quarters Of A Mile 6.Its Too Late Now
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REVIEW: ブルーノートの3作目だからVOl.3、なんか投げやりな。スムースでふくよかな音色のトロンボーンとトランペットの二管が奏でるハーモニー。間を埋めるクラークのコロッとしたピアノ。
そんな常套句のような前書きを書いてはみたが、私、この典型的なブルーノート1500番台と云うかハードバップ・サウンドは相当苦手である。もしジャズがこの時代のサウンドで止まっていたらジャズファンにはならなかったはずである。と言うわけで申し訳ないが撤退します。全6曲中、フラーのオリジナルが5曲と気合十分なご様子のアルバムなのにスマン。タッカーはいつものタッカーです。
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■ vol GT-12 Jazz Its Magic! (7.17.2008)
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リーダー名 : Curtis Fuller
メンバー : Curtis Fuller tb, Sonny Redd as, Tommy Flanagan p,
George Tucker b, Luis Hayes ds |
タイトル: Jazz Its Magic! |
録音年月日: 1957 09 05 |
レーベル/規格番号: SAVOY |
収録曲: 1.Two Ton 2.Its mgic ~My One And Only Love~ They Didont Believe Me 3.Soul Station 4.Club Car 5.Upper Berth |
REVIEW: サヴォイ・レーベルはチャーリー・パーカーの諸作と数枚の人気盤、例えばこのアルバムのリーダーでもあるカーティス・フラーの「ブルースエット」等があるばかりで他は塵の山の感が強い。さらにジャケットのイモさ加減がゴミに拍車をかける。極彩色の、デザインとは無縁の趣味の悪いジャケットの数々。
でも、有るんですね、たまにいいアルバムが。これは相当上位にランクされるべきサヴォイです。トミー・フラナガンにソニー・レッドとくれば悪い分けないか。フラーのオリジナルが3曲、フランク・フォスターのオリジナルを最後に置いている中で、最大の聞き物は3曲のスタンダードが13分余り及ぶメロディを形成する2だろう。フラナガン、レッド、フラーそれぞれのソロが素晴らしい。タッカーは堅実なサポートに徹している。
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■ vol GT-11 That’s It (5.2.2008)
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リーダー名 : Booker Ervin
メンバー : Booker Ervin(ts), George Tucker(b),Horace Parlan(p),
Al Harewood(d)
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タイトル: That’s It |
録音年月日: 1961 01 16 |
レーベル/規格番号: CANDID |
収録曲: 1. Mojo 2. Uranus 3. Poinciana 4. Speak Low 5. Booker’s Blues
6. Boo |
REVIEW: 高名なジャズ評論家のナット・ヘントフがプロデュースを担当した、硬派なレーベルのキャンディドに記録されたアーヴィンの代表作。このレーベル、マックス・ローチ「ウィ・インシスト」、セシル・テイラー「ワールド・オブ・セシル」、ブッカー・リトル「アウト・フロント」等、マイナーならではの意欲的作品が多い。それと、チャールス・ミンガス一派のリーダー作が多いのも特徴の一つで、ミンガスをはじめ、ジャッキー・バイアードやリチャード・ウイリアムスのリーダー作も残されている。アーヴィンもミンガスのサイドメンということで白羽の矢が立ったのだろう。
クルト・ワイルの名曲「スピーク・ロウ」の名演としても記憶されるアルバムで、アナログ時代B面ばかり聞いていた想いでがある。その曲、あらためて聞いてみると、アーヴィンも良いがパーランのピアノがこれまた良い。背後の躍動感溢れるタッカーのベースも豪快に飛ばす。
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■ vol GT-10 Cookin' (5.2.2008)
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リーダー名 : Booker Ervin
メンバー : Booker Ervin ts, Richard Williams tp, Horace Parlan p,
George Tucker b, Danny Richmond ds
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タイトル: Cookin' |
録音年月日: 1960 11 26 |
レーベル/規格番号: SAVOY |
収録曲: 1. Dee Da Do 2. Mr.Wiggles 3. You Don’t Know What Love Is
4. Down In The Dumps 5. Well,Well 6. Autumn Leaves |
REVIEW: リズム・セクションをそのままに、トランペットをミンガス・バンドの同僚でもあるリチャード・ウイリアムスに代えて吹き込まれた2枚目のリーダー作。前作同様オリジナル曲が大半の4曲を占めるが、ここでの聞きものは、アナログ時代A面とB面の最後に置かれた3の「恋の味をご存知ないのね」と6の「枯葉」だろう。特に「枯葉」はキャノンボールとマイルスの超名盤があるだけに比較の対象になりやすい。そこでの評価は「イモい」「田舎もん」「ナンセンス」等である。そのとおりで、このテキサス・テナーのノリ一発、田舎臭さこそがアーヴィンの魅力と理解されたし。
いつもどおりタッカーのベースは実直で豪快である。 |
■ vol GT-9 The Book Cooks (5.2.2008)
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リーダー名 : Booker Ervin
メンバー : Booker Ervin ts, Zoot Sims ts, Tommy Turrentine tp,
Tommy Flanagan p, George Tucker b, Danny Richmond ds
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タイトル: The Book Cooks |
録音年月日: 1960 06 00 |
レーベル/規格番号: BETHLEHEM |
収録曲: 1.The Blue Book 2.Git It 3.Little Jane 4.The Book Cooks 5.Largo
6.Poor Butterfly
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REVIEW: ミンガス門下の荒くれ者と言った風体のアーヴィンのファースト・リーダー作だ。ズートも加わったテナー2本の3管編成とは珍しい。タッカーの重厚なウォーキング・ベースが突き刺さるブルースでスタートする。前半3曲がその3管によるもの。5がアーヴィンのワン・ホーン、6がタレンタインとの2管。そして4がアルバム・タイトル曲でもあり最大の聞き物、10分以上に及ぶズートとの手に汗握るテナー・バトルである。この余韻が1ヵ月後のズート最大のブロー作品「ダウン・ホーム」へと引き継がれていく。
あまり語られることのない、しかしアーヴィンらしさの充満した高得点のアルバムだ。
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■ vol GT-8 Roamin’With Richadson (3.6.2008)
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リーダー名 : Jerome Richardson
メンバー : Jerome Richardson fi,ts,bs, Richard Wyands p, George Tucker b, Charlie Persip ds
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タイトル: Roamin’With Richadson |
録音年月日: 1959 10 21 |
レーベル/規格番号: Prestige/New Jazz |
収録曲: 1.Friar Tuck 2.Up At Teddy’s Hill 3.Warm Valley 4.Poinciana 5.I Never Knew 6.Candied Sweets |
REVIEW: クインシー・ジョーンズやサド&メル・ビッグ・バンド、あるいは膨大な数のスタジオワーク(スティリー・ダンとか)での、隠し味の利いた黒子的役割の多いジェローム・リチャードソン。リーダー作となればこれを入れて5枚ほどしかない。テナー、バリトン、フルートを操った本アルバムはその中でもマルチ・リード奏者の面目躍如で、代表作と言って良いと思う。
メンバーの人選がその成功の大きな要因だろう。ピアノのリチャード・ワイアンズ、ドラムのチャーリー・パーシップ、共に趣味の良い控えめな好バッキング。アルバム劈頭を飾る1はタッカーが作曲したブルース。控えめな伴奏人の中にあってゴリゴリのベースは耳を奪う。続くリチャードソンのテナーも艶やかで逞しい音色で魅了する。有名な「ポインシアナ」はフルートでの軽快で清々しい演奏。タッカーがぐいぐい引っ張る。
テナーが2曲、バリトンが3曲、フルートが1曲。テナーがもっと聞きたかった。
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■ vol GT-7 Taking Care of Business (3.6.2008)
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リーダー名 : Oliver Nelson
メンバー : Oliver Nelson Ts,As, Lem Winchester Vib,
Jonny “HAMMOND”Smith org, George Tucker b, Roy Haynes ds
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タイトル: Taking Care of Business |
録音年月日: 1960 03 22 |
レーベル/規格番号: Prestige/New Jazz |
収録曲: 1.Trane Whistle 2.Doxy 3.In Time 4.Lou’s Good Dues 5.All The Way 6.Groove |
REVIEW: 代表作「ブルースの真実」で有名なネルソンの「ミート」に続く2枚目のリーダー作。制作された1960年は4枚のリーダー作を録音しており、結構人気があったようだ。オルガンのジョニー・ハモンド・スミスが参加しているから余計かも知れないが、ネルソンはブルースに根ざした泥臭いサックス奏者だと感じさせる。オルガンに加えてヴィブラフォンまで参加したそのサウンドはクラブ系の音源を好むリスナーには受けそうだ。
タッカーに関しては、ベースの宿敵オルガンの存在が影を薄くしているのは隠せないものの存在感を放っている。タッカーの強靭なベースだからこそでしょう。
とは、言うものの今回のG.T.特集の中で今のところ一番苦労したアルバムです。
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■ vol GT-6 Jay Hawk Talk (12.6.2007)
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リーダー名 : Carmell Jones
メンバー : Carmell Jones tp, Jimmy Heath ts, Barry Harris p,
George Tucker b, Roger Humphries ds
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タイトル: Jay Hawk Talk |
録音年月日: 1965 05 08 |
レーベル/規格番号: Prestige |
収録曲: 1.Jay Hawk Talk 2.Willow Weep For Me 3.What Is This Thing Called Love? 4.Just In Time 5.Dance Of The Night Child 6.Beepdurple |
REVIEW: ジャズ・ロック?リー・モーガンの「サイドワインダー」やフレディー・ハバードの「バック・ラッシュ」に対抗した表題曲「ジェイ・ホーク・トーク」で幕が開く。同じくジャズ・ロックの作品でホレス・シルバーのヒット作「ソング・フォー・マイ・ファーザー」のトランペットが彼だったと知れば納得する。しかしそんな制作者の意図は無残に砕かれ、ほとんど無視されたアルバムである。もし2曲目の「柳よ泣いておくれ」がトップに置かれていれば、アルバムの人気ももう少し上がったのではないだろうか。クリフォード・ブラウンに最も影響を受けたと語るカーメルの、歌心と中音域の美しい音色が十分に堪能できるトラックだ。西海岸と欧州で多くの活動をするカーメルが、わずか1年ほどの東海岸活動時代にプレスティッジに残したリーダー作。
ここでも、重厚で粘りのあるタッカーのベースが底辺をしっかり支えている。
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■ vol GT-5 San Francisco Suite (12.6.2007)
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リーダー名 : Freddie Redd
メンバー : Freddie Redd p, George Tucker b, Al Dreares ds
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タイトル: San Francisco Suite |
録音年月日: 1957 10 02 |
レーベル/規格番号: Riverside |
収録曲: 1.San Francisco Suite 2.Blue Hour 3.By Myself 4.Old Man River
5.Minor Interlude 6.This Is New 7.Nica Steps Out
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REVIEW: 1956年、旅先のスウェーデンで録音されたピアノ・トリオの大名盤「イン・スウェーデン」もこの夏に初CD化されたばかりのレッド。これはその翌年に名門リヴァーサイドに録音されたもの。4部から成るアルバム・タイトル曲でもある組曲「サン・フランシスコ・スイート」が一番の聞き物。パウエル派の特に個性的とも言えないピアニストだが、作曲能力には目を見張るものがあることを分からせてくれる。と、このアルバムを語る場合いつも言及されている。が、真剣にアルバムを聞いて発見した。寺島流に言うと5曲目「マイナー・インタールード」だけで買いのアルバム。レッド、ドレアレス(マルのレフト・アローンに参加)、そしてタッカー、全てが素晴らしい。ホレス・パーランの「アス・スリー」に迫る勢いだ。
大切なジャケットの名前の表記が、FreddieではなくFreddyになっているのは単なるミスなのか、それとも何か意味があるのだろうか?
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■ vol GT-4 Con Alma! (12.6.2007)
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リーダー名 : Charles McPherson
メンバー : Charles McPherson as, Clifford Jordan ts, Barry Harris p,
George Tucker b, Alan Dawson ds
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タイトル: Con Alma! |
録音年月日: 1965 08 06 |
レーベル/規格番号: Prestige |
収録曲: 1. Eronel 2. In A Sentimental Mood 3. Chasing the Bird 4.Con Alma
5. I Don’t Know 6. Dexter Rides Again
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REVIEW: チャールス・マクファーソンは本邦ではほとんど無視されたアルト奏者だ。オーネット以降にデビューしながらその影響を微塵も感じさせなかったのが無視された一番の原因だと思うのだが。もう少し遅れて70年中盤辺りにデビューしていればバップ・リバイバルもあってもう少し評価されたかも。艶やかな音色、絶妙な節回し。チャーリー・パーカーの再来か。プレステッジも相当評価していたはずだ。モンク、パーカー、ガレスピー、ゴードン、エリントン、そしてオリジナルが各1曲ずつ。いい。時代があと10年遅れていれば評価されたかも。タッカーは相変わらず深遠だ。
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■ vol GT-3 Fire Down Below (9.20.2007)
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リーダー名 : Ted Curson
メンバー : Ted Curson tp, Gildo Mahones p, George Tucker b,
Roy Haynes ds, Montego Joe conga,
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タイトル: Fire Down Below |
録音年月日: 1962 12 10 |
レーベル/規格番号: Prestige |
収録曲: 1.Fire Down Below 2.The Very Young 3.Baby Has Gone Bye Bye
4.Show Me 5.Falling In Love With Love 6.Only Forever
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REVIEW: ミンガス一派のトランペッター、テッド・カーソンがプレステッジに吹き込んだアルバムはこの1枚だけである。他のアルバムはオリジナル曲を中心に構成されることが多いのだが本作は全部人の曲。アルバムタイトル曲でもあるカリプソ・ナンバーの1に始まりスローあるいはミディアム・スローな楽曲が続く。いつもは肩肘張っていたカーソンにしては、ゆったりとしたアフターアワーズのような演奏の数々。ベースの動きに注意して聞くと楽しいよ。
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■ vol GT-2 Unity (3.10.2007)
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リーダー名 : Walt Dickerson
メンバー : Walt Dickerson(vib),Walter Davis Jr(p),George Tucker(b)
Andrew Cyrille(ds),Edgar Bateman(ds)
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タイトル: Unity |
録音年月日: 1964 03 05 |
レーベル/規格番号: Audio Fidelity |
収録曲: 1,Unity 2,High Moon |
REVIEW: タッカーの参加したもう一枚のアルバムが、Vibes in Motionとタイトルされ、Lawrence of Arabiaとの2イン1CDとしてスペインのフレッシュサウンドから発売されている。
先の奥方のポートレートを使ったカバー写真に続き、今回はおめかしした愛息と愛嬢の写真。ディッカーソンってよほど家族を愛していたんだろうなと思わせる。
ピアノがヒルからデイヴィスに変わり、ドラムが2台になった。
ベース・パターンが執拗に繰り返される。音のでかいタッカーのベースが適役の表題曲Unity。どこかで聞いたようなロマンチックな曲調のHigh Moonではタッカーのリードベースが堪能できる。
もう一つ印象の薄いアルバムだがタッカーに関しては大満足の作品。それにしてもドラムを二人にした成果は感じられないな。
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■ vol GT-1 To My Queen (2.19.2007)
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リーダー名 : Walt Dickerson
メンバー : Walt Dickerson(vib),Andrew Hill(p),George Tucker(b),Andrew Cyrille(ds)
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タイトル: To My Queen |
録音年月日: 1962 09 21 |
レーベル/規格番号: New Jazz |
収録曲: 1.To My Queen 2.How Deep Is The Ocean 3.God Bless The Child
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REVIEW: と言う訳で最初に選んだのがヴァイブの奇才ウォルト・ディッカーソンの代表作「トゥ・マイ・クイーン」。
1961年と62年に4枚のアルバムをプレスティッジとその傍系レーベルのニュージャズに残すが、これは最後の4枚目。メンバーを見てほしい。タッカーは勿論だが、ピアニストはアンドリュー・ヒル、ドラマーはアンドリュー・シリルだ。最高傑作ができる訳だ。
ヴァイブとベースのデュオでスタート、やがてピアノとドラムも加わる。ディッカーソンのオリジナルでアルバム表題曲でもある1曲目が全てと言っても過言ではない。この深遠さ、高潔さ、4人の誰一人とて欠けては成しえなかった神秘なる世界。17分強の曲ながらあっという間に終わってしまう。もっと長く続いてほしいと思わせるトラックだ。
そして、ここでのタッカーは特筆ものだ。バッキングでは強力にソロイストを誘発する。それにも増してベース・ソロの素晴らしいこと。強靭で、知的で、しなやか。奇跡かもしれない。
ビリー・ホリデイが作曲の一翼を担った「ゴッド・ブレス・ザ・チャイルド」はヴァイブとベースとによるデュオ曲。タッカーは終始弓弾きで奏でる。
これはディッカーソンの代表作であるばかりかタッカーの代表作だと断言する。
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