2024年 私のお気に入り or Best
各レビュアーへの目次
Ozaki Murakami Sato Hirose Takeda Miura Goto
Ozaki

Marshall Gilkes “Life Songs”
https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/502018852.html
曲の美しさを損なわず、それでいてテンションを上げていくような即興が実に見事。
個人的な気分としては、初めてMaria Schneider (https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/a49866431.html )を聴いた時のような衝撃を感じながら聴いた作品。

Art Hirahara “Good Company”
https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/505685880.html
多過ぎず少な過ぎずの気持ち良いところを絶妙についた音数で、抒情的な響きが非常に心地良い3者のサウンドが見事に融和してえも言われぬ音世界を構築、瞬間的にはフリーな展開も見せるところが侮れない。個人的にかなりはまって聴いていた作品。

Yotam Silberstein “standards”
https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/504599725.html
待望していたyotam silbersteinのstandard集。
期待した通り、テーマと即興の演奏に集中しているような演奏で、個人的にYotam Silbersteinに期待したい演奏がたっぷりと堪能できた作品。

特別賞:魚返明未 “照らす”
https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/504213530.html
美しさのなかに、耽美な響き、ゴージャスな雰囲気、美麗なフレーズ、そして激しさを感じさせる場面とさまざまな表情をたっぷりと詰め込んだピアノが実に心地良い。魚返の凄さを垣間見せた作品。
Murakami

1.Clifford Jordan/Beyond Paradiso 1969-1970
クリフォード・ジョーダンの1969年制作「イン・ザ・ワールド」は私の最大の愛聴盤の一枚。それは69年春に録音されたが、秋にオランダを訪れたジョーダンは現地のミュージシャンを集めて「イン・ザ・ワールド」の楽曲を吹き込む。それがこれだ。

2.Julian Lage/Speak To Me
最近の作品は抽象的なアルバム・カバーばかりだったのに、いきなりドアップな顔写真。自信の表れか?アコースティックとエレキ・ギターがほぼ半々。圧倒的にエレキがいいな。

3.Jeff Parker ETA IVtet/The Way Out Of Easy
ジュリアンが正面からジャズギターを追求しているとしたら、ジェフは斜向かいからかな。
じわじわと効いてくる温泉のようなサウンド。

宮沢昭/野百合
昨年の旧譜再発ではこれがトップ。浅川マキがプロデュース。渋谷毅のピアノと二人きりでの録音。CDでは3度目の発売だが、アナログ発売は初。アナログ好きだったマキさんも草葉の陰で喜んでいるでしょう。
Sato

1.AMARO FREITAS 「Y’Y」
プリペアド・ピアノ奏法を用いてアマゾンの大気や水の循環のイメージの楽曲が空間豊かに展開されます。2024年で一番聴いたアルバムです。

2.魚返明未 「照らす」
11曲すべてが魚返さんのオリジナル曲で、メンバーの高い集中力を感じる演奏で、曲世界に連れていかれます。曲への流れといい、ジャケット写の仕掛けといい、芸術家としてのこだわりを感じるアルバムです。

3.Joel Ross 「nublues」
オリジナル7曲にJohn Coltraneのequinox・central park west、およびThelonious Monkのevidenceが演奏されます。一曲目のヴィブラホンがポワワ~ンと響いた途端に曲世界に一気にひきこまれ、Immanuel Wilkinsのアルトの音色に感情を揺さぶられます。

3.番外 LIZZ WRIGHT 「SHADOW」
歌声こそ最強の楽器です。深々とした声に癒されるアルバムです。
hirose

1.Fred Hersch “Silent,Listening”
昨年9月、コットン倶楽部東京でのソロ公演がドタキャンとなり、我々ファンはHIVの再発か?と危惧したが1か月の入院で回復し、10月のVanguardでのBirthday Gigs はいつもの通りのFred Hersch Trioであった。(NY帰国後、久しぶりのSmokeはキャンセル、代替ピアノはKenny Barron, Boston公演もキャンセル)。
ベースはThomas Morgan,ドラムがJoe Dysonという新トリオ。火曜日の演奏はJoeが譜面とニラメッコの状態、ベースのTomはいつも通り、安泰かつ重心感あるプレイ。週後半、土曜日、日曜日の演奏はTom,JoeともいつものFred Hersch Trioになり、Perfect なGigとなった。(小生6日間12セット中10セットのみ参加。)
演奏曲、オープナーはFredの好きなBenny GolsonのWhisper Not,セット閉めの曲、バラードはMoonlight in VermontかWest Side Story のSomewhere、プラス、Monk作品が演奏されることが多かった。
さて本新譜、ECMから2枚目のCD.Fred お気に入りのスイス、ルガーノのAuditorio Stelio Molo RSI,完璧なピアノ、エンジニアは名手Stefano Amerio、彼の好きなBilly Strayhorn,Alec Wilderの曲、Jazz の有名曲、と自作新曲(かつてのOpen Bookを思い起す)などFred が持つ正にFred Herschだけの音世界が、辛い過去を乗り越えた喜びが溢れる作品となった。彼が表現できる正にRAREな幽玄ともいい得る世界である。

2.Mike Holober &The Gotham Jazz Orchestra
約30年前のマンハッタンはBig Bandが聴けるJazz Venueが多く存在した。 Village VanguardでVJO(かつてのThad Jones,Mel Lewis Orc.) Sweet BasilでGil Evans Orc.,VisioneseでMaria Schneider Orc.,Condon‘sでClifford Jordan BB,Time Café under FezzでMingus BB,Fat Cat でJason Lindner BBなどなど。
MikeはNY City Collegeの教育者、かつ、ピアノ奏者。tpのMarvin StammとDuo, Qurtet,Balancing Act というBig Combo(Vocalをいれた8人編成)と本the Gotham Jazz Orc.のリーダーでGrammyのLarge EnsembleでNominate作品取得の実力者である。
Mike 自身、登山、カヌーと自然派スポーツマン、本作品はUSの環境保護者、自然愛護 団体への賛歌である。メンバー、Chris Potter,John Patitucci,Marvin Stamm,Ben Kono, Jason Rigbyと実力者揃い踏み、そしてリーダーのMikeのソロが秀逸で、万華鏡のようなensembleが圧巻である。

3.池田篤 “Taste of Tears”
池田さんの演奏を聞いたのは1990年代初め、NY,Visioneseの火曜日Ralpf Lalama主宰 のJam Session.参加者は多くが黒人、とラテン系の若手Jazz Musician、その中に一人の東洋人。確か曲はStella。群を抜く熱いプレイで大きな拍手が飛んだ。日本人ですか? の問いに、池田といいます。との回答。当時、池田さんはアルトの名手Pete Yellinの指導を受け、villageの日本料理屋で手伝いをしていたが、アルバイトのつもりが5年間 の長期となり、最終的にチーフの役職をうけ、このままNYに居残ると調理人になるな、と判断し帰国に至った、との本人からの後日談。帰国後、重篤な病の発症があり困難な時期もあったが、幸いに完治し、演奏に復帰。最近は小曽根さんのNo Name Horses,ソロ、デュオ、トリオ、クァルテット、そして国立音大の教育者として大活躍である。新譜は池田さんのアルト、吉田桂一さんのピアノ、上村信さんのベースと名手揃い。 曲はJazz Standardの名曲の進行をもとに’替え歌‘、contrafactしたもの。池田さんの作曲によるStandard集、特にバラードに彼の音楽世界の深さ、を感じた。このTrioによる全国ツァーが始まっている。

Historical Louis Armstrong “In London”
昨年10月、NYへ行った際、Harpistの新人、Brandee Youngerの演奏がRouis Armstrong House Musiumで行われるとの案内があり、アームストロング博物館に行ったことがないこともあり、初めて訪問した。彼女のGig待ちの時間、膨大な音源を見て、館員に現在入手できる最近発売されたCDはありますか?との回答が本CDである。 音源は1968年9月、BBC/TV作成でアームストロング最晩年の演奏である。TbのTyree Glenn,PのMarty Napoleonなど、演奏内容も良く、オールド・サッチモのTp, Vocalも素晴らしい、すべてのジャズ愛好家にとってMust BuyのCDと確信する。Benny Carterの名言、“どんな楽器を演奏しようとも、俺たちの中にはルイがたっぷりしみ込んでいる“という表現、まさに至言である。
takeda

1.⚫︎The Other Side / T Bone Burnett
プロデューサーとしても数多くのの名作を手がけてきたT ボーン・バーネットのソロアルバム。
自分好みのフォーク、カントリー所謂アメリカーナ的な曲、サウンドで愛聴しました。

2.⚫︎Beautiful Happening / Fairground Attraction
アルバム一枚リリースして解散してしまったイギリスのグループ。「パーフェクト」好きな曲でした。
なんと36年ぶりのアルバム。リード・ボーカルのエディ・リーダーのヴォーカルに癒されました。

3.⚫︎Live at Fillmore East, 1969 / Crosby, Stills, Nash & Young
デビューまもない1969年の未発表ライブ。演奏にミスや荒っぽさもありますが、当時の音源が公式にリリースされ楽しむことができて、ファンにとってはうれしいアルバムでした。
Miura

1.RAINY EYES, LONESOME HIGHWAY
アメリカの女性ボーカリストのアルバムです。
私の大好きなThe Bandの皆々が今若くして蘇ったらこうなるのでは、と思わせるレコードです。これを聞いた後に、ボビーチャールズを聴くと、いい夢が見れます。幸福な毎日です。

2.Nancy Vieira, genre
アフリカはセネガルの西に浮かぶ島国カーボベルデの歌姫のアルバムです。メランコリックで奥深くどこまでも伸びゆくNancyの歌声に心がほぐれます。フェラクティも好きですが、その対極にあるNancyも素晴らしい。

3.Hedigan’s 2000JPY
サチモスのYONCEを擁する24年に誕生したニューバンド。ユーモアがありながらもシュール。なんだか、こうゆうの好きなんです。
Goto

1.ボブ・ディラン&ザ・バンド『偉大なる復活:1974年の記録』
27枚組CDボックス・セット。1974年1月から2月まで、北米21都市で行った計40公演のうち、現存する26公演のライヴ・テープが公演単位でディスク化された。途中でくじけそうになりながらも、全て聴いた。全431曲聴いて最も印象に残ったのは、結局、ボブ・ディランのヴォーカリストとしての魅力だった。悲しみや怒りや喜びをディランが全力で歌い、聴き手はそれに鼓舞される。本当に驚くほど声と言葉が生きているのだ。ディラン最高!(これを書いている数日前の1月21日に、ザ・バンドの最後の生き残ったメンバー、ガース・ハドソンが死去というニュースが届いた。ご冥福をお祈りいたします)

2.魚返明未『照らす』
アルバムタイトル曲の『照らす』での後半のピアノ・ソロの高揚感とスケールの大きさは、本アルバムの最大のハイライト。一音一音に魂がこもり、感情が爆発する。7曲目の『Normal Temperature』では、尋常ではないスピードでフレーズが積み重ねられ、ベースとドラムとともに強靭なグルーヴ感を聴き手の耳と体に与える(ピアノの感じと、曲の構成が、この曲に関しては70年代の菊地雅章みたい)。そして、終盤の『夏の駅』。もうソウルフルとしか言いようのない感動的なピアノ・ソロが聴ける後半がジーンと来る。
ときには素朴でもある魚返のストレートなメロディを、怒涛の勢いを持つ完全無欠のジャズに昇華させる、高橋と中村のベースとドラムの力量とセンスも素晴らしい。二人のつくるグルーヴのうねりを聴くだけでも、とても刺激的。

3.ザ・クロマニヨンズ『ヘイ!ワンダー』
中学生でザ・ブルーハーツに出会って、以降30数年、甲本ヒロト(ヒロト)と真島昌利(マーシー)の新作は必ず買っている。こういう存在(今で言う“推し”)がいるだけでも、もう幸せな人生なんだろうなと思う。ヒロトの歌う楽曲のメロディ、詩情。ベースとドラムの轟音。そしてシンプル・イズ・ベストのマーシーのギター。今作で一番好きなのは、ヒロト作の『大山椒魚(おおさんしょううお)』かな。“吹雪の山を越えて/大山椒魚は行く/長い旅になる/大山椒魚が行く/大山椒魚が行く”そう、まだ旅は長い。クロマニヨンズやいくつもの音楽に元気をもらいながら行くだけです。