2005 私のお気に入り or Best 3 By 村上寛
■ 新録CD

新録CDタイトル 1
Private notes

アーティスト名

 

松風鉱一 quartet

 

決して当店でライヴレコーディングされたから選んだ訳ではない。渋谷オーケストラを去来した多くのサックス陣の中でも一番の勤続年数を誇る松風。いつもはマルチリード奏者の使い勝手を買われている節もあった。しかし遂にベールは剥がされたのだ。 ここ数年、パーマネントで率いる異能集団のデビュー作となる本作は、松風の作曲能力と個性的なサックス奏者ぶりを天下に知らしめるものである。と同時に加藤崇之、水谷浩章、外山明と云う、驚愕すべき音楽性と運動能力を誇るサイドメンを堪能できるアルバムでもある。 私が望んだこのバンドの全貌が刻まれたこのCD、世界に聞かせたい。

新録CDタイトル 2
er

アーティスト名

 

Nils petter molvaer

 

北欧ブーム?である。ピアノトリオ、ヴォーカル物、フリージャズ系と次から次に発売された。特にノルウェイ。全人口が横浜と同じ位の国から目を見張るアルバムが制作される。 昔、ジャズは圧倒的に寒い国の音楽であって、暑い地方からはジャズは生まれないと言われていた。確かに暑いと小難しい音楽は必要ないと思う。陽気な音楽がいいだろう。だから四国生まれの私は、東北や北海道生まれの人間にジャズを聴く感性で負い目を持っていた時期があるくらいだ。 ニルスの音楽の冷たさったらない。そしてこれほど未来を予見させるような感触の音楽も。 ECMを離れてのアルバムは切れ味に乏しかったが、本作は久し振りに私を唸らせる。寒い国にしか作りえないフューチャージャズの傑作。


新録CDタイトル 3
Live at Moers

アーティスト名

 

佐藤允彦

 

2002年の暮れに富樫雅彦が演奏活動から身を引くと、翌年から佐藤允彦の「プレイズ富樫雅彦」シリーズがスタートする。 そして、間もなく紙ジャケで再発売される予定の佐藤、富樫、荒川康男からなる佐藤トリオのデビュー作にして最高傑作「パラジューム」から36年、佐藤の富樫雅彦に対する献身的な奉仕の最大の成果が記録された。二人のマサヒコ、友情の結晶である。


■ 復刻CD

復刻CDタイトル 1
A JAZZY PROFILE OF JO JO

アーティスト名

 

高柳昌行

 

この復刻には最大の敬意を払いたい。フリージャズの殉教者、高柳にはある種の畏怖を感じていた。脳を破壊せんとばかりのノイズの洪水。延々と続く不協和音の塊。それらは凡人の私には理解の範疇を超えていた。時折制作されたクール理論での作品、「銀巴里セッション」「クール・ジョジョ」「ロンリー・ウーマン」を愛していた。そしてこれはそれらの間を埋める貴重な記録。これほど個性的なピッキングとフレージングは世界を見回しても皆無である。

クリスチャンに匹敵するほどの天才を再確認する。


復刻CDタイトル 2
ONE DOWN,ONE UP

アーティスト名

 

John Coltrane

 

多くの人が今年の復刻盤の上位にランクするであろう傑作。65年はマッコイ、ギャリソン、エルヴィンから成る不滅のカルテット最後の年。「至上の愛」は既に録音されていて、発売直後かされる頃の録音。悪かろうはずがない。特に1枚目の1曲目、アルバム表題曲が凄い。エルヴィンとの息詰まるガチンコ対決は20分をゆうに超えている。しかし少しの弛緩もない。

この時期のコルトレーンを聞くと他のジャズが空虚な屑に思えてくる。ジャズを気持ちの良い音楽としか捉えないとするならコルトレーンは必要ないかもしれないが、コルトレーンを体験しないジャズファンなんて・・・。折角ジャズに出会えたのに、もったいない。




復刻CDタイトル 3
Old folks

アーティスト名

 

渋谷毅 武田和命・カルテット

 

1985年の暮れにアケタの店にてラジカセで録音された貴重な音源のCD化だ。曲は全て有名ジャズスタンダード。本来なら安易な企画と無視するところだが、そうはいかない。渋谷と武田そしてベースには川端民生が参加しているのだから。ジャズに対する真摯な姿勢、尊敬の念。斜に構えて本質を突く。 特に表題曲の生命力に溢れた各自の表現力に圧倒される。

 


 

 



 

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