2006 私のお気に入り or Best 3 By 村上寛
■ 新録CD

新録CDタイトル 1
Trouble

アーティスト名

Jamie Saft Trio

ジョン・ゾーンやデイヴ・ダグラスとの共演で知られるキーボード奏者の興味深い新作。副題にPlays Bob Dylanとあるように全曲ディランのカバーで占められている。2曲ではゲストヴォーカルも加わるがその内の「やせっぽちのバラード」は元フェイス・ノー・モアのマイク・パットンだ。
  それほどディランを愛聴している訳ではないが大好きなアルバム「オー・マーシー」から2曲が選ばれている。トップの「お前の欲しいもの」はピアノ、ラストの「自惚れの病」はハモンドオルガンで奏でられる。共に胸がしめつけられるほど余韻の深い演奏。


新録CDタイトル 2
hi ha

アーティスト名

hat

スペインのピアニスト、セルジ・シルヴェントを中心にギター、ベース、ドラムからなる若手4人組のデビュー作。1曲目アルバム表題曲の浮遊感漂うフェンダーローズとギター。やがてピアノにチェンジして舞い上がるその様のカッコいいこと。大西順子を彷彿させる。
全体にローズを優先させている作品だがもう少しピアノの出番を多くすればよかったような気がする。しかし要注目のバンドには違いない。



新録CDタイトル 3

アーティスト名

Andrew Hill

1986年に開催されたお祭りジャズの一大イベント、第1回「マウントフジ・ジャズフェスティヴァル」の初日、アルフレッド・ライオンの誘いに応じてヒルは8月29日のステージに登場する。89年にはブルーノートに最初の復帰もしている。
  そして、2度目の復帰である。
  モンクに一歩も劣らぬ個性的なピアノスタイルと作風は健在。若手3人に混じってトランペットはチャールス・トリバー!なんとトリバーもブルーノートからのデビュー作を間もなく発売するそうだ。ジジイの音楽に成り下がった日本とは大違いのアメリカ・ブルーノートには頭が下がる。


■ 復刻CD

復刻CDタイトル 1

アーティスト名

宮沢昭カルテット

ディスクユニオンが企画する日本ジャズの復刻シリーズは、内容はともかく珍しさを追求したシリーズだと思う。そんな中にあって異彩を放つ宮沢2作品の発売意義は大きい。 「いわな」はアナログで発売時に購入していた。事あるごとに聞き、その度に感激した。邦人ジャズの金字塔と呼んでいいだろう。 なぜこの「木曽」を発売当時買わなかったのだろう?「いわな」での宮沢と富樫雅彦と佐藤允彦のコラボレーションのあまりの見事さに比べ、「木曽」での森山威男の暴走ドラミングが佐藤をも豹変させ、あまりにコルトレーン然としたサウンドに愕然としたのか?  そして30余年の歳月を経て再聴する。 空間を埋め尽くす森山の重厚なドラミングを得て、まさにスピリチャルな広くて高くて深い宮沢がいる。これも傑作なり。


復刻CDタイトル 2
イン・ザ・ワールド

アーティスト名

クリフォード・ジョーダン

権利関係やマスターテープの所在有無で絶対にCD化されないだろうと言われていた音源が遂に出た。こつこつとストラタイーストの復刻に努めたボンバレコードではなく、横からスッと割り込んできたP-ヴァインレコードからだったのは何か割り切れないものを感じるのだが。
17分にも及ぶ1曲目「Vienna」のめくるめく陶酔感はどうだ。男気あふれるジョーダンのテナー、それを見事にサポートするドン・チェリーのトランペットがまた素晴らしい。親分の仇討で敵対する一家に乗り込む池辺良と高倉健のようだ。
何はともあれCD化を喜びたい。


復刻CDタイトル 3
イースト・ベルリン1966

アーティスト名

ロルフ&ヨアヒム・キューン・カルテット

これも凄い発掘だ。弟のヨアヒムは今も活躍するヨーロッパ屈指のピアニストだが、クラリネット奏者の兄ロルフの動向はほとんど伝わってこない。しかし現在もコンスタントに作品を発表しているようだ。
1966年と言えばコルトレーンが来日した年。世界同時にフリージャズが吹き荒れた年だろう。世界は呼応していたのだ。それを証明する東ドイツの怒れる青年たちによる、フリーのベクトルが明確に感じられる清々しい傑作。

 


 

 



 

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