張碓とは小樽市の外れにある地名であり、2年ほど前に廃駅として壊されてしまつた秘境駅として鉄道マニアには有名な駅の名らしい。札幌から程近い小樽だし、札幌在住の石田が張碓に興味を抱いたのはもっともな話だ。
昨年の春に発売された石田トリオのデビュー作。ピアノの石田が25歳、ベースの瀬尾が27歳、ドラムの竹村はなんと17歳の時の録音。1曲目の「低音限界」2曲目の「高速限界」、共に名は体を表す曲であり演奏。重厚な快速球。フリーでありながら難解さのまるでない清々しいスタイルだ。一転「ハリウスU」や「雪風」の北欧の空のような耽美さに襟を正す。目を見張る作曲能力、完璧な技巧、表現力の新鮮さ。パーフェクト!
断言しよう。石田幹雄は10年に一人の天才だと。
このアルバムの発売は昨年最大の収穫である。これで石田が40代に突入する後15年ほどは、私もジャズファンでいられそうだ。