2009 私のお気に入り or Best 3 By Goto |
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★新録CDタイトル 1 |
リンデンバウム・セッション |
アーティスト |
松風鉱一 |
メンバー |
松風鉱一(as,ts,fl), 南博(p), 吉野弘志(b) |
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スタジオ・ウィー |
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ノートランクスの村上さんに特にジャズの新譜について話しているときによく問われるのが、「じゃあこのアルバムを何回も聴こうと思うか?何年か経ったあとにもまた引っ張り出して聴こうって思う?」ということで、ジャズの新譜会を3年ぐらいやらせてもらっているなかで、自分で選盤しておきながらも、「これはもう聴かないかもな」と思ったり、あるいは実際に新譜会の後一度も聴いてない作品もわりと高い確率であるのも正直言えば事実だから、その問いはけっこうグサリとくるものであったりもする。これを言ってしまうと身も蓋もないが、金や時間が制限されているなかでは、昔のジャズマンの名盤を地に足つけて追っているほうが、楽しめる効率は高い。そして個人的実感としては、そのほうがジャズに深く入り込むことができるようにも思う。・・そんな保守的とも後ろ向きとも言える心境を抱いていた晩秋に聴いて、ものすごく「これだ!」と思ってしまったのが、この松風さんの作品。これを「新しいジャズ」だ、と言おうとは僕は思わない。しかしあえて言うのであれば過去のジャズの名盤が持つ音楽的刺激・興奮と同種の質がここにはあるのだ。それは昔のスタイルをなぞっているということとは全くレベルが違う、ジャズを血肉化したものがオリジナルとして説得力を持って表現されているということである。これは聴いて、ほんとジャズだなーって思った。間違いなく今後何回も聴くアルバムだと思う。 |
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★新録CDタイトル 2 |
CONTROL THIS |
アーティスト |
MICHAEL BLAKE (ts,as)& KRESTEN OSGOOD(ds) |
レーベル |
CLEAN FEED |
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質実剛健、男気のあるジャズ。しなやかで強くて、心を躍らせるジャズ。自分の語彙が少なくこれ以上のものは出てこないが、この素晴らしいデュオ作品には感銘を受けた。ギミックなしの裸で勝負。聴かせる。ビートの感覚というかノリは、現在進行NYジャズの先端とは無縁、言葉は悪くなってしまうが、古いスタイルかもしれない。しかし自分にとっては上の松風アルバムと同様、「ジャズを聴いた」とかなり実感できたアルバム。鬼才マイケル・ブレイクのジャズのセンスが爆発。(余談だが、ブレイク本人がこの作品のライナーで、「自分が初めて聴いたサックスとドラムのデュオは、コルトレーンの『アフロ・インプレッションズ』の中の『ロニーズ・ラメント』で・・」と言及していたので、慌てて聴いてみた。63年11月パリでの黄金カルテットのライヴ、曲の後半でのコルトレーンとエルヴィンのデュオにすこぶる興奮した(後年と違い演奏時間はまだ短いが)。二人だけの音なのに、生まれてくるグルーヴのスケールがめちゃくちゃに大きい!) |
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★新録CDタイトル 3 |
NEEDFUL THINGS |
アーティスト |
橋爪亮督(ts,cl,effect,voice), 清野拓巳(g), 浜村昌子(p), 萬恭隆(b) |
レーベル |
GRAPES RECORDS |
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4人中3人はバークリー出身の30代半ば過ぎ。その3人がオリジナルを何曲かずつ持ち寄り録音されたライヴ盤。世代的・環境的にはジャストということになるのであろうか、マーク・ターナー(ts)やベン・モンダー(g)といった現代NYジャズのトップミュージシャンの影響も多大に感じられる音で、橋爪を筆頭に、出てくる音の音色が従来の日本のジャズとは違うテイストがあり、やけに耳に残る。聴いて思わずフレッシュ・サウンド・ニュー・タレント・レーベルの新作?とも思ったが、よく聴くと、一概には「日本人っぽくない」とかとは決して言えない情緒(日本人っぽい?)みたいなものも色濃く漂っていて、そこがすごくおもしろいなと思った。 |
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★復刻 1 |
ブリリアント・モーメンツ |
アーティスト |
山下洋輔 |
メンバー |
山下洋輔(p), 中村誠一(ts), 森山威男(ds),坂田明(as), 武田和命(ts), 国仲勝男(b), 小山彰太(ds),林栄一(as) |
レーベル |
ジャムライス |
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70年から83年のそれぞれ貴重な音源を収録したCDも素晴らしいが、76年モントルー・ジャズ・フェスでの山下・坂田・小山トリオのパフォーマンスを映像として収めたDVDに、もう度肝を抜かれた。こんなのをもしリアルタイムで目の当たりにしてしまったら人生が変わってしまったんではないか、と大げさじゃなく思えるほど、すさまじく熱い演奏。とにかく絶対観てほしいというしかない。フリージャズが限界を突破し「フリージャズ」という形式ですらない圧倒的エネルギーの塊になったとき、聴き手の興奮は気づけば深い感動に転化している。その状態を指して山下トリオの「ドシャメシャ」と言うのではないだろうか。このDVDを観ながらそんなことを考えた。(そして、そういう意味で、2009年7月日比谷野音での山下洋輔トリオ復活祭に僕は「ドシャメシャ」を感じることはできなかった、ということもあえて付記しておきたい。) |
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★復刻 2 |
LAST PERFORMANCE AT NEW PORT |
アーティスト |
JOHN COLTRANE |
メンバー |
JOHN COLTRANE(ts,ss,per), PHAROAH SANDERS(ts,piccolo,per),
ALICE COLTRANE(p), JIMMY GARRISON(b), RASHIED ALI(ds)
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レーベル |
FREE FACTORY |
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「曲を五回聴くんだ、シシリア。楽器ごとに聴いていくんだよ。最初はずっとベースだけを聴く。もう一度、今度はサックスだけを聴くというふうにね。一回だけ聴いて論じようとしてはいけない」(ジョン・コルトレーン)。4年ほど前に邦訳版が出た「『至上の愛』の真実」(音楽之友社)という本を先日読んだらコルトレーンがそんなことを言っていた。この本人の言葉に従って、ぜひともフリーに突入し最後まで疾走した時期のコルトレーンを聴いていただきたい。当初は後期コルトレーンが苦手だった自分も、何度も聴いてるうちに、エルヴィン・マッコイ・ギャリソンの黄金カルテット並み、いやそれ以上にこの時期のコルトレーンの深さを愛するようになってしまった。このディスクは、写真や映像や話ではよく知っていた伝説の66年ニューポート・ジャズ・フェスティバルの音源発掘盤。音は良くはないが、コルトレーン最後の録音とされるオラトゥンジ・コンサートよりはいい。いや、音が良ければ、晩年の最高傑作として間違いなく残ったであろう、ものすごく充実した素晴らしい演奏がここには記録されている。言葉を失ってしまう。 |
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★復刻 3 |
COLUMBIA STUDIO SESSIONS |
アーティスト |
JDENNY ZEITLIN |
メンバー |
DENNY ZEITLIN(p), CECIL MCBEE(b), FREDDIE WAITS(ds), CHARLIE HADEN(b),
JERRY GRANELLI(ds), JOE HALPIN(b), OLIVER JOHNSON(ds)
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レーベル |
MOSAIC |
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1964年から67年にかけてザイトリンがコロンビアに残したリーダー4作のうち、「カセクシス」、「カーニヴァル」、そして今回初CD化となる「ザイトガイスト」を収録した3枚組ボックス。さらにそれら3枚と同時録音の未発表音源が12曲も収められているという、さすがモザイクと感嘆したくなるいい仕事な内容。精神科医としての修行期と並行しながらの音楽活動ということで、この絶頂期に結果的にザイトリンは恒常的なグループをつくることができなかったということが、このボックスを聴けば聴くほど悔やまれる。個人的にはザイトリンの作曲センスも際立つヘイデンとグラネリとのトリオがやはりベストかなと思うが、ザイトガイスト・トリオの先鋭さも捨てがたい。 |
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