チャールズ・ロイド、ポール・モチアン、カサンドラ・ウィルソン、はたまたジョー・ヘンリーと、ここ1〜2年だけでも多くの大物ミュージシャンの作品に参加し、しかも、それぞれの作品で非常に印象に残る存在感を聴き手に与えてきたジェイソン・モラン。自身のリーダー作としては2006年以来、まさに満を持 してのという感が強い今作は、もうワン・アンド・オンリーとしか言えないモランの才能が全編に溢れ出す大傑作になった。ずっと彼を追ってきたファンにしてみれば、いやモランだけじゃなくて、このバンドワゴン・トリオが凄いんだよということになるかもしれない。一度このトリオのライヴを体験したことがある僕もそれは全 面的に賛成で、まあともかく、同時代にこういうジャズのグループがいるというのは、非常に幸せなことである。
モランのことに戻ると、自分の知識不足だけかもしれないが、実績やポジションからいってもいてもおかしくないフォロアーというのがあまり思いつかなく、その誰も真似できないという孤高さは、今作が捧げられている師ジャッキー・バイアードとアンドリュー・ヒルに通ずるところでもある。いま唐突に思いついたが 、バイアードやヒルの才能を彼らのキャリア初期からしっかり評価していたジャズ評論家・油井正一氏(2010年は13回忌でした。)がもし生きていれば、このジェイソン・モランを「現代の最もユニークで最も素晴らしいジャズ・ピアニストだ」と断言していたのではないだろうか、きっと。 |