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2010 私のお気に入り or Best 3 By GOTO

■ 新録CD

新録CDタイトル 1
JASON MORAN / TEN
チャールズ・ロイド、ポール・モチアン、カサンドラ・ウィルソン、はたまたジョー・ヘンリーと、ここ1〜2年だけでも多くの大物ミュージシャンの作品に参加し、しかも、それぞれの作品で非常に印象に残る存在感を聴き手に与えてきたジェイソン・モラン。自身のリーダー作としては2006年以来、まさに満を持 してのという感が強い今作は、もうワン・アンド・オンリーとしか言えないモランの才能が全編に溢れ出す大傑作になった。ずっと彼を追ってきたファンにしてみれば、いやモランだけじゃなくて、このバンドワゴン・トリオが凄いんだよということになるかもしれない。一度このトリオのライヴを体験したことがある僕もそれは全 面的に賛成で、まあともかく、同時代にこういうジャズのグループがいるというのは、非常に幸せなことである。
モランのことに戻ると、自分の知識不足だけかもしれないが、実績やポジションからいってもいてもおかしくないフォロアーというのがあまり思いつかなく、その誰も真似できないという孤高さは、今作が捧げられている師ジャッキー・バイアードとアンドリュー・ヒルに通ずるところでもある。いま唐突に思いついたが 、バイアードやヒルの才能を彼らのキャリア初期からしっかり評価していたジャズ評論家・油井正一氏(2010年は13回忌でした。)がもし生きていれば、このジェイソン・モランを「現代の最もユニークで最も素晴らしいジャズ・ピアニストだ」と断言していたのではないだろうか、きっと。


新録CDタイトル 2
ORRIN EVANS / FAITH IN ACTION
上記のジェイソン・モランそして次に書く石田幹雄と並び、個人的には現在のジャズで最も好きで最も期待しているピアニスト、オリン・エヴァンス。この人は通好みなところがあるというか、内容の充実したリーダー作が出ても派手に話題になることは決してないけど、一度好きになった人間からは地味だが圧倒的に 支持されるというアーティストの典型。10年ほど前にクリスクロスから出た「Blessed Ones」を傑作だと熱く語る人を僕は何人も知っている。
ここ数年は、自身のレーベルからリーダー作をたまに出したり、あとはサイドマンとして周辺ミュージシャンの作品に参加したりと、マイペースな活動を続けている印象だったが、posi-toneというロサンゼルスの新興レーベルから、久々に新作が出た。しかも、スタジオ録音によるピアノトリオ・アルバム。これは、「Blessed Ones」の再現ではないか!と、発売前から興奮気味で待ち受けていたが、期待どおりの大充実作で、興奮は倍増した。
音楽的にエヴァンスが多大な影響を受けたサックス奏者ボビー・ワトソンの楽曲集という正直地味な(彼らしい)題材ではあるが、それが良かったのか、非常に彼の個性が分かりやすいかたちであらわれた作品。とにかく、鍵盤から聴こえる強靭なバネと打音の強さに、胸を鷲掴みにされるのだ。「オリン・エヴァンス聴 いてるとジャズ聴いてる!って感じするんだよなー」とは前述の「Blessed Ones」支持者の一人の言葉だが、現在のエヴァンスの魅力をジャズファンに伝えるには、最もふさわしい作品が新たに登場したなと思う。


新録CDタイトル 3
吉田隆一&石田幹雄 / 霞
正直に言うと、聴いた当初は、「たしかにいいよなー、でも、この二人だったらもっと分かりやすくゴリゴリでぶつかり合ってもよかったんじゃないか。」偉そうだがそんな感想を持った。その後2回ほど観たCD発売ライヴもその延長にある印象だったと思う。
2010年ベストを考えるために、最近聴きなおした。2曲目のおなじみの石田作「ハリウスU」で、自分の中でそれまで入らなかったスイッチが入った。石田のピアノがすごいことになっている、そう思った。淀みなく流れるようでいて、しかし無駄な音を極限まで選び削ぎ落した音といったらいいだろうか、一音一音 がやたらにこちらに届くのだ。前作の「ターキッシュ・マンボ」について本人に「石田さんのやるビバップがすごいかっこよくてー」と話したら、「あれは、まだまだ浮足立ってて・・」みたいなことを言っていて、そのときは謙遜かなと思っていたが、今はその意味が分かるような気がする。もし石田幹雄のファースト・アルバム 「ハリウス」を聴く機会があったらぜひともそこにも収録された「ハリウスU」と聴き比べてほしい。確実に音の質は深化している。そしてそれは、吉田隆一という石田にとって信頼できるパートナーだからこそ引き出された部分もおそらくあるのだろう。
来るべきペンギン・トリオの新作も含め、2011年は石田幹雄がどう変化していくか、ものすごく注目していきたい。

 

 

 

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