個人的には、2010年一番頻繁に聴いたアルバムかもしれない。元々バス・クラリネットの音は大好きなのだが、本作の情感豊かなトーンは実に素晴らしい。楽器の特性を活かして、竹内のリリカルな側面を押し出した作品と言えるだろう。しかも、ふくよかで「生命」を感じさせる竹内の息遣いに、御大・中牟礼貞則による快楽中枢をピンポイントで刺激するギターが絡むのだから、もはや反則。なお、本作には中牟礼と山下洋輔の共演という驚愕のトピックもあるが、主役の竹内が強力な存在感を発揮しているので、「超豪華なおまけ」だけに目を奪われるのではなく、まずはアルバム全体のダンディズムに満ちた美学を味わってほしい。 |