何年か前に友部正人のライブで演奏を聴いたり、以前からリクオの音楽には触れてはいたが、作品を買ったのは今回が初。この作品に飛びついた最初の理由は、ずばり「お得感」。なにしろCD2枚組プラス収録時間120分のDVD付で税込4,000円という価格、30名近い多彩なアーティストが出演してるという充実っぷりだ。ディスクには、2010年11月〜12月に、東京、名古屋、大阪、福岡で6回開催されたイベント「ホーボー・コネクション」の模様が収録されている。シンガーソングライター・リクオのデビュー20周年を記念したイベントで、彼のキャリアに深い関わりを持つゲストがそれぞれ参加している。有山じゅんじ、梅津和時、三宅伸治、ハシケン、バンバンバザール、ギターパンダ(山川のりを)、山口洋、藤井一彦、キムウリョン、そして前述した友部正人などなど、好きな人にはよく分かるなー筋通ってるなーという色を持ったメンツ。
ゲストがリクオ・バンドと一緒に1〜2曲ずつ演奏し、かつ「アイ・シャル・ビー・リリースト」もやったりしてるので、まったくいかにもな連想をしてしまえば、「ラスト・ワルツ」のようである。ただリクオの個性なのだろう全般的には重さや厳かさよりは軽やかでよい感じの空気がまったり流れていて、それにまた救われる。休みの日に酒でも飲みながら聴くとなお気持ちいいかもしれない。名演は多い。ハシケンが唄う「ソウル」の名曲ぶりに泣き、ギターパンダの「とばせロック」に笑いながらも勇気づけられ、「軽い後悔」の藤井一彦の熱いギターには拳を握ってしまう。山口洋の実に男気のある歌いっぷりに惚れ惚れする「TOKYO CITY HIERARCHY」も良い。この作品で僕は初めて聴いたキムウリョンという人の何とも天然なキャラも魅力的だ。この作品のおかげで買いたくなるCDや観たいライブが増えてしまった。
リクオは現在48歳。この作品の出演者の多くがその同世代。40歳がもうすぐ近づいてる今の自分にはこういう一世代上の人たちがやってる音楽ってのが、やけにリアルに響いてくる。60代前半の友部さんや梅津さんの音楽は常に憧憬であるが、この作品で聴ける50歳前後のアーティストの醸し出してるものには、これからの自分にとってのヒントがあるように思える。CD・DVDともにラストで歌われる感動的な「パラダイス」の中で、リクオは高田渡のこんな言葉を引用する。「死ぬまで生きる!」。名言だ。