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REVIEW

2021年 私のお気に入り or Best

昨年に続いてコロナの猛威にさらされた1年間でした。

Chick Corea、 Lonnie Smith、Pat Martino、村上“ポンタ”秀一、和泉宏隆
と亡くなったミュージシャンも多く、特にChick Coreaの訃報はショックでした。

そんな中こじんまりと新譜会は4回とも開催できましたし、当blog(JazzとAudioが出会うと・・)での新譜紹介も同じペースで続けることはできました。尾崎

各レビュアーへの目次

Ozaki  Murakami  Hirose  Takeda  Sato  Sakima

Ozaki

年間ベストについて、例年押し迫ってから慌てて悩みだすんですが、例年通りノリで決めています。
これも例年通りですが順番をつけないで3枚と、特別賞を1枚挙げます。

Murakami

1.Molly Miller Trio / St. Georg

7歳からギターをはじめ、2016年に南カリフォルニア大学で音楽芸術の博士号を取得した後、ロサンゼルス音楽大学のギター学部の部長に就任。そんな彼女の2作目。 テレキャスターの鋭角な音色でまるで60年代辺りの雰囲気を醸し出す。決して変わった事をやらなくても十分に堪能させてくれる

2. Charles Lloyd & The Marvels/Tone Poem

マーベルスの3作目。グレッグ・レイズのペダルスチールが出しゃばることなく至福の時を奏でます。3曲目、レナード・コーエン作曲の「アンセム」が哀しいほどに美しいです。

3. 菊地雅章/hanamichi

亡くなる2年ほど前の2013年録音のスタジオ最終作。ラストは「リトル・アビ」で幕を下ろします。美しく燃え尽きました。

Hirose

1,Isaiah Collier & the Chosen Few “Cosmic Transitions” 

シカゴの神童、23歳、イザイア・コリアーの3作目。コルトレーン、ファラオ・サンダースの信奉者と思われる。録音は2020年9月23日、コルトレーンの誕生日に、ルディ・バン・ゲルダー・スタディオで、“至上の愛”を録音した時とまさに同じ機材を使用、したという。LP名は“Cosmic Transitions”で水星の動きが逆行することにより、コミュニケーションがFuzzyになる,と言う。(何のこっちゃ?)5曲の組曲。コルトレーンの凄まじい咆哮と、晩期の宗教観、無限の宇宙観を示す静寂な世界を“宇宙の変遷”組曲で謳う。大作である。

2,Ulysses Owens Jr. Big Band “Soul Conversations”

Kurt Elling,Christian McBride,Joey Alexanderとの共演で知られる、ユリシーズのビッグバンドの1作目。2019年12月NYリンカーンセンターのDizzy’s Clubでの4夜に亘るライブの録音。まずはメンバーの構成である。白人、黒人、 黄色と混血。男性と女性。そして、リードラッパ、Walter Cano,4番ラッパ、Giveton Gelin, リードトロンボーン、Michael Dease,リードアルト、Alexa Tarantino,2番アルト、寺久保エレナ、ピアノ、大林たけし、ベース、 中村やすし、ドラム、Ulysses Owens Jr.という将来性ある実力者揃い踏みである。  曲はジャズ、ポップスの名曲、メンバーのオリジナル等であるが編曲者特に Michael Thomas(Micah Thomasとは別人)のアレンジは聞きものである。

3,Banksia Trio ,Takashi Sugawa “ Ancient Blue”

BanksiaTrioの2作目。リーダー、須川の音楽世界は膨大である。日本ツァーを敢行したLeo Genovese(Esperanza Spaldings,Francisco Mera等と共演)、Tom Rainey(Fred Hersch,Mary Halvorsonと共演)の“Outgrowing”でも演奏したAncient Blue,Uncompleted WaltzがこのWorking Trioでは熟成され自家薬籠中の逸品に仕上がっている。Poo-San,Paul Motianの世界が垣間見え、Brooklynの、Barbes,Happy Lucky No.1の音が聞こえる。世界を跨ぐ日本人TRIOと評価する。

3,Billy Test Trio “Coming Down Roses”

Billy Testの初リーダー作、CD名は若干意味深であるが、中身は真っ当なピアノトリオ作品。小生は2019年7月末、VanguardでVJO(Vanguard Jazz Orc.)のピアノ(おそらくAdam Birnbaumのトラか)に座る彼の演奏を聞いた。 現在WDR Big BandのPIANO正式メンバーとして活躍している。  Richie Beirach,Jim McNeely,Phil Markowitz,Fred Herschなど多くの実力者の 指導とともに賛辞にSophia Rosoffも連なる(Whiteside奏法もマスターか?)、2019年のコールポーター賞では最終ファイナリストとなる。  ど真ん中の直球プレーが心地良い。

Takeda

Becca Stevens & The Secret Trio

近年枠にとらわれず精力的に活動するBecca Stevens。 最新作はニューヨーク在住の中近東出身のミュージシャンとの作品。プロデューサーはマイケル・リーグ。 エスニックなバックのサウンドの響きの中に彼女のソングライティング能力と艶かしいヴォーカルが際立つ。

Chrissie Hynde /Standing In The Doorway: Chrissie Hynde Sings Bob Dylan

ボブ・ディラン・カバー集。同じ 企画でLucinda WilliamsのBob’s Back Pages: A Night of Bob Dylan Songsもよく聴きました。コロナ禍ということもありプリテンダーズのメンバーとリモートで録音されてます。自分にとっては隠れ名曲と感じた曲が何曲があり、これがきっかけでBob Dylanの80年代を代表するアルバム「infidels」やBootleg Seriesも聴きました。 Lucinda と被った曲は1曲のみ「Blind Willie McTell 」。 なぜか「infidels」に収録されずお蔵入りしてしまった名曲。今はBootleg Seriesで聴けますけどね。

Bruce Springsteen & The E Street Band /The Legendary 1979 No Nukes Concerts

1979年ニューヨークはマジソン・スクエア・ガーデンで催された反原発コンサートでのまさに歴史的な約90分のライブを2CD+Blu-ray(またはDVD)の仕様でリリース。未発表10曲を含む全13曲の完全版映像作品といえるでしょう。ほぼ絶頂時といえるBruce Springsteen & The E Street Band のエネルギーは圧倒的。とにかく熱い。盛り上がれました。

Charles Lloyd & The Marvels/Tone Poem

JAZZの新譜を購入したのはかなり久しぶり。国内盤ボーナス・トラックに「In My Room 」を追加収録してくれました。ありがとう。

Sato

SILVER LINING SUITE / HIROMI THE PIANO QUINTET

時が経ち、コロナが治まった後でこのアルバムを聴いた時、コロナ禍の不安、イライラ、焦り、悲しみ、希望、安らぎ、それがないまぜになった感情を思い出すかも・・・ ピアノと弦楽四重奏で、2021年という時代を表現したアルバム。

SOUNDS FROM THE ANCESTORS / KENNY GARRET

18歳からプロで活躍するケニー・ギャレットも還暦を過ぎ、これまで自分をインスパイアしてくれた先祖、先輩、後輩に感謝を捧げたアルバム。 ケニー・ギャレットの音楽の懐の広さ、楽器のテクニック、表現力の極みを感じました。

Little Boy’s Eyes / 土岐英史

国立No Trunksの新譜試聴会で紹介した翌日、土岐さんの訃報を知り、びっくりしたアルバム。 リーダーの土岐さんが、両サイドの若手ギタリスト二人の演奏をゆったりと楽しんで見ている姿が見えます。 アルバムを聴くたび、こうしてJAZZの伝統が引き継がれていくだな~としみじみします。

Sakima

Caetano Veloso / meu coco(僕の脳ミソ) 

9年ぶりとなる新作が2021年10月にデジタル・リリース、そして1月に移籍第一弾として‟ソニーミュージック“よりCDで発売された。 3人の息子たち世代によるバック・アップを中心に、往年のバンド仲間も参加した本作はバイーア愛に溢れたカラフルな作品が並ぶ。⑪「サンバがなくちゃ」はさすがカエターノ・ヴェローゾ、今年80歳を迎えるがその音楽愛と声質には脱帽!

Gal Costa / Nenhuma Dor (ネニュマ・ドール)

カエターノとくればガル、名盤ドミンゴ(67年)以来の盟友は50数年の時を経た今もお互い現役、奇しくも21年に新作リリース。こちらはドミンゴから3曲、そして70年後期の彼女の代表曲をメインとした全10曲の構成で、旬の男性ミュージシャンたち10名との共演といった趣向。かつてカエターノがポルトガル語に訳したディランの名曲Negro Amor (It’s All Over Now, Baby Blue)も収録。

The Band / Stage Fright (50周年記念2CD) ‟Disc 2“ 

R.ロバートソン監修のシリーズ3作目。今回は新しいミックス、曲順の変更などB.クリアマウンテンと共に音響的な若返りを施した作品となっている。(70年8月に発売のオリジナル盤は全米5位まで上がり彼らにとって最も売れたアルバム)。 しかしここではDisc 2のロイヤル・アルバート・ホールでのライヴ(71年6月)をお勧め!メンバーの誰もが予想していなかった熱烈な歓迎を受けた当時の彼らのステージ。かつて5CDボックスに3曲のみだが収録されていた入魂のパワフルな演奏が20曲、自然に腰が浮いてくる。

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