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REVIEW

2020年 私のお気に入り or Best

2020年、私たちが経験したことのない異常事態が起こりました。コロナのせいで多くのライヴやイヴェントが延期、中止となりました。CDの発売数は減ったのでしょうか? おかげで過去の音楽を見つめなおすいい機会でした。 今年もBEST3が掲載できてよかったと思います。

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各レビュアーへの目次

Murakami  Sakima  Hirose  Takeda  Sato  Ozaki

Murakami

高柳昌行g×菊地雅章p×井野信義b:Live at Jazz inn Lovely 1990

1990年の10月、AAOBBを率いて来日していた菊地が名古屋のラヴリーに立ち寄った際にゲスト参加したのではなかろうか。全5曲のうち1,2,5に菊地が参加している。 高柳と井野はデュオ・グループを1年前から結成していて、阿吽の呼吸である。その二人に菊地の切れ味鋭いピアノが絡む。 1960年にジャズ・アカデミー・カルテットを金井英人b,富樫雅彦dsと4人で結成して以来の共演となる。

1.Trio 2 (11:03) 2.Trio 3 (18:02) 3.Duo 1 (15:20)4.Duo 2 (11:50) 5.Trio 1 (20:57)

林栄一オーケストラ:Naadam 2020

2020年古希を迎えた林栄一。初リーダー作「マズル」から30年目の集大成盤である。彼を慕う若手、中堅が集結している。年を経ても絶えぬ栄ちゃんの創作意欲に頭が下がります。

石田幹雄p瀬尾高志b竹村一哲ds :緑輪花

2007年の4月に録音された、彼ら三人によるデビュー・アルバ「張碓」の衝撃は忘れられない。比較の対象ではないかもしれないが、大西順子の「ワウ」と同等くらいだ。それから13年。夫々の道を歩んでいた三人が再び集結した。 大人びた音になったとか、精密になったとか、気になる部分はあるにせよ、13年の流れだ。聴くべきピアノ・トリオは間違いない。

映画「ランブル 音楽界を揺るがしたインディアンたち」

久しぶりに目から鱗。アメリカン先住民のインディアン子孫たちが、これほどアメリカン・ミュージックに影響を与えていたなんて。絶体観るべし。

Sakima

Chris Barber & Dr. John / Mardi Gras At The Marquee

あのマーキー・クラブでマルディ・グラ?! 「可愛い花」(1959年)で知られた UKトラッド・ジャズのリーダー、クリス・バーバーとニュー・オリンズの呪術師こと ドクター・ジョンによる83年のライヴ編集盤。オリジナルはアナログ2枚組。 まだまだリリースを止めない‟ウルトラ・ヴァイヴ”頑張れ!  【珍盤】

Jimi Hendrix Experience / Live In Maui (2CD+Blu-ray) SICP-6361~3

突然の死を迎える約一か月半前の70年7月30日、ハワイ州マウイ島で行った2回の ライヴの完全版2枚組CDと、映画‟レインボウ・ブリッジ”制作の顛末を中心に描く ドキュメンタリー「Music, Money, Madness … 」と、2回のパフォーマンスで現存 する全てのショット映像(フルではないのが残念)を収録したBlu-rayで構成。 黒のギブソン・フライングVを手にしたジミ・ヘンが見もの! 【コレクター盤】

Caetano Veloso / Verdade Tropical  熱帯の真実/国泰真奈 訳

夜の巷の彷徨いもめっきり減った、新譜にも手を出さなくなった2020年の冬、大型 書店の新刊棚で‟目を引く装丁”の分厚い一冊に出会った。 1997年にブラジルで刊行の全訳に、20周年を記念して刊行された新版の序文および 各章の注を加えたもの。内容の中心は50年代から70年代半ばまでの時代に焦点を当て ており、映画、文学、演劇、人、政治そして音楽についての個人的な回顧録となって いる。多用されるポルトガル語のカタカナ表記と特徴的な文体に手を焼いたが、読み 進むにつれて、カエターノの綴るブラジルの真実に引き込まれていった。巻末の解説、 人名索引、曲名・アルバム索引も充実した渾身の翻訳が光る。【マニア本】

Hirose

1.FRED HERSCH “SONGS FROM HOME”  

JAZZ TITAN,FRED HERSCHは昨年コロナ禍のNYからペンシルベニアのポコノ山の別荘に  避難し、一時間の水泳、たまのメールチェックのほか新聞、TVは見ず、7フィートのスタイン  ウエイに没頭した。その結果が本CDである。なんの仕掛けもないソロピアノ、東洋的日本的侘び  寂びをも感じさせる研ぎ澄まされた世界が表現される。FRED本人も正直反響の大きさに少なか  らず驚いた、と述べる。数多い反響のなかで、The Wall Street Journal紙、Will Friedwald氏の  ”Not Just Songs From Home,but songs for home”が正鵠である。FREDの長い病との闘いの  末勝ち取った安寧と今なお一人行く孤高の世界、豊穣で深遠なソロピアノは、コロナから未来へ  の新しい扉を開くNice Treatmentである。

2.THE ROYAL BOPSTERS “PARTY OF FOUR”

Vocaleseの老舗、Lambert,Hendricks & Rossの伝統と、Amy Londonを核としたNew SchoolのVocal部門のFacultyが織りなす四声のコーラスグループ。T.Dameronの名曲、”On A Misty Night”,W.Shorterの “Infant Eyes”,さらに遺作となったAltoのHollie Rossがソロを  とる”Quando Te Vea”など秀逸な仕上がりである。そしてゲストのChris McBrideのベース、  シンシナティのピアノの名手、Steve Schmidtのソロなど聞きどころが多い。  パンデミック・ムードを粉砕し、明日に向かって元気を出す、エネルギーを産み出すCDである。

3. IMMANUEL WILKINS ” OMEGA”

Generarion Z, Millenialsといった世代のYoung Lionsの出現である。メジャーリーグで云えば  170キロの直球を投げる新人たちの登場である。とにかく若い。Giveton Gelin(ギブトン・ジェ  リーン、Tp, Julliard最終学年),Immanuel Wilkins(Alto),Micah Thomas(マイカ-・トーマ  ス、FRED も絶賛するPiano),Michael Dease(Tb)、かれらはJulliard繋がり、JoelRoss(Vib)は  Brubeck Institute、New Schoolの教育を得ている。技術的には完成の域にあり、JazzのMain  Stream を深耕し、発展させる逸材とかんがえる。現在、旬の演奏者であり、彼らの生のGigを早  くみたいな!

Takeda

MATT ROLLINGS / MOSAIC

アメリカの作曲家、レコード・プロデューサーでピアノ、オルガン、キーボード・プレイヤーのマット・ローリングス。主にアメリカーナ系のシンガーをゲストに迎えたアルバムでマット・ローリングスは歌伴に徹しています。 Alison Krauss with Vince Gillの「Stay」と Lyle Lovett, Ramblin’ Jack Elliott & Willie Nelsonによる「That Lucky Old Sun 」は心に染みました。

Melody Gardot / Sunset in the Blue

前作はライヴ盤でスタジオ録音盤としては5年ぶりのアルバム。プロデューサーはラリー・クライン。クールな彼女のヴォーカルはオリジナル、カバーとも素晴らしく、良い感じ。特に流麗なストリングスをバックにポルトガル語で歌われるボッサ調の曲には痺れました。

Brian Wilson & Van Dyke Parks / Orange Crate Art (25th Anniversary Expanded Edition)

名盤の発売25周年記念盤。3曲のボーナス・トラックとオリジナル・アルバム収録曲のうち11曲のバック・トラックを収めた2枚組。 ボーナス曲の「Our Love Is Here To Stay 」と「What A Wonderful World 」が最高、感動しました。 あとはBob Dylan、James Taylor、Burt Bacharach & Daniel Tashian、Bruce Springsteen 大きな差はありません。

Sato

2020年は、新型コロナの流行により「新しい生活様式」への移行を余技なくされた1年でした。 私のBEST3は、新型コロナウィルス禍の中で印象に残る3枚となります。 私の新しい生活様式の一つが、テレワークや休日に、ラジオを聴くようになったことです。 BEST3の2枚は、ラジオ番組を切っ掛けに知ったアルバムです。

大友良英 NEW JAZZ QUINTET 「Hat and Beard」

NHK FM「JAZZ トゥナイト」のパーソナリティ大友良英さんは、「あまちゃん」や「いだてん」の音楽担当として有名です。 番組で、ジャズの豊富な知識を活かして歴史や演奏の妙をクールかつ穏やかに語りますが、実際、どんな演奏するだろう?と興味本位で聴いたアルバムです。 聴いたら「音の洪水」「ノイズ」で、番組の語り口の穏やかさと大きなギャップがあり、驚きました。 聴いた後、頭の中を洗濯されたようなすっきり感を覚える不思議なアルバムです。

Marius Neset DR Big Band conducted by Miho Hazama 「Tributes」

NHK FMの「狭間美帆ニューヨーク・バイブズ」で知ったアルバムです。 狭間さんは、指揮者として参加しています。 Marius Neset(テナー、ソプラノ)とBig Bandの一体感、サウンドとアレンジがきらきらな楽しい一枚です。 最後の1枚は、米国のピアニストFred Hershが、新型コロナウィルス禍でSTAY HOMEする私たちのために届けてくれたアルバムです。

Fred Hersh 「SONGS FROM HOME」

1曲目の「WOULDN’T IT BE LOVERLY(すてきじゃない)」は、映画「マイ・フェア・レディ」内の歌。 下町育ちの花売り娘のささやかな夢を聴いていると、今の状況も決して悪くはないと思わせてくれます。 Fredが10代の頃に愛聴した曲が中心で、歌うように演奏しています。 詩の内容を知り、繰り返し聞くことで、じわじわとフレッドの思いを感じるアルバムです。 私の2020年のBEST 1 アルバムです。

Ozaki

今年は前半に良い盤が多かった印象で、忘れないように当時からメモをしてはいたのでそれを参考に、多数ある年末入手の未聴盤は放っておいて、いくつかリストアップしたなかから、ほんのちょっとバランスを考えつつ、あとは(例年通り)ノリでキメています。
例年の通り順番をつけないで3枚と、特別賞を1枚挙げます。

“Time Remembered” 須川崇志 Banksia Trio

https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/473722748.html

石若の起用はなんとなく予想できるが、林正樹は意外だった。 美しさとほの温かさと程よい緊張感が渾然一体とした素晴らしい作品でした。

“Data Lords” Maria Schneider

https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/477963114.html

今年も大所帯バンドをいくつか聴きましたが、これが出ちゃぁおしまいよというMaria Schneider。 しっかり作り込まれていながら、貫禄みたいな雰囲気すら感じさせる圧巻のアンサンブル。 2枚組の大作を一気に聴かせる見事なアルバム。

特別賞 Aubrey Johnson “Unravelled”

https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/473722845.html

今年2月に逝去されたLyle Maysの最後の音楽関連の仕事と言われている、彼の姪の初リーダー作をを特別賞とさせていただきます。Lyle Maysのご冥福をお祈りいたします。

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